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3.新築した建物の名義は慎重に

 Aさん(50歳)という大会社の課長さんに起こったことです。AさんにはBさんという25歳のひとり娘がいて、奥さんともどもお婿さん探しに苦労していました。よく「帯に短しタスキに長し」というように、なかなかよい相手にめぐまれず、何回か知人の紹介で見合いをしましたが、あまやかして育てたせいか、好ききらいがはげしくて、自分の方から断ってしまうような状態でした。

しかしあるとき、Bさんは友人の結婚披露宴の席で知り合った大手電気メーカーの営業マンとすっかり仲よくなって、真剣に交際をするようになりました。それから数ヵ月後にBさんの口から、
「Yさんと付き合っていて、先日、プロポーズをされました。Yさんも、お父さん、お母さんに会いたいと言っています。ウチに連れてくるけれど、いいかしら」
そんなことからトントン拍子で結納、そして結婚式をすませ、Aさん夫妻もホッと一安心しました。

さてそこで、娘夫婦はとりあえず近所のアパートで生活をはじめましたが、家賃が1ヵ月12万円もするため、かなり生活費が苦しいとのことでした。
そこでAさんは、自宅約100坪のうちの庭の部分、約50坪に娘夫婦の家を建ててやろうと考えました。そして知り合いの建築会社の社員を呼び、約2000万円の予算でAさん自ら計画し、設計して、建築にとりかかりました。
資金は、Aさん自身の定期預金を全部解約して、建築会社の支払いをすませました。そうしておいて、この家を娘に贈与したのです。娘夫婦も喜んで新居で生活をはじめました。と、そこまでは親子とも、とても幸福でした。

ところが翌年の1月に、税務署から「贈与税について」の呼び出しのハガキが娘宛てに舞い込みました。さっそくBさんが税務署を訪れたところ、

調査官
「あなたは建物を新築されましたが、その金額はいくらですか。またその資金の出所は?」

Bさん
「私の父が約2000万円で、私のために建築して私にくれたものです。私の資金は全然ありません」

調査官
「では、あなたのお父さんからあなたへの2000万円の贈与となります。贈与税の申告をしてください。贈与税は約802万円になります」
Bさんはびっくり仰天して自宅に帰り、父親に「贈与税が802万円もかかる」と話したところ、父親は贈与税がかかることは知っていたが、そんなに多額の税額とは思わなかったのでさっそく娘とともに税務署へ行き、調査官に会い、贈与税の課税の内容を聞きだしました。

調査官
「この建物の保存登記はBさん名義でしており、資金の出所は全額、お父さんが建築会社に支払ったので、この建築資金の2000万円の贈与となります。娘さんがお父さんから2000万円の贈与を受けて、娘さんが建築会社に支払ったことになります」
それを聞き、Aさんはカンカンになって怒り出しました。

Aさん
「とんでもない、私は娘に2000万円を贈与しておりませんよ。私の定期預金を解約して、私自身が建築会社と契約して、私が直接、建築会社に支払ったものです。そして建物が完成してから、娘にこの建物を贈与したものです。建物の贈与は、評価金額の贈与だと知人から聞いています。だから、評価金額の贈与なら納得するけれど、建築資金は娘に渡していないから、そんな建築資金の贈与なんかは認められない」

以上の経緯を常識的に考えますと、税務署の判断にはおかしいところがあります。親が娘に2000万円を渡して、娘が建築会社に2000万円を支払うようなことは、おそらくありえません。親が直接建築会社に支払ったということは、誰が考えても当然なことです。それを税務職員は無理にワンクッションを入れて、娘に2000万円の建築資金の贈与をしたと指摘しています。

たしかに建築資金の贈与だと2000万円になりますが、建物そのものの贈与だと、おそらく1000万円前後になると思われます。すると、贈与税額は283万円。802万円と283万円ではえらいちがいです。Aさんは、
「現金は贈与していない。建物を贈与したのだ」
と自分の主張を押しとおして、その日、Aさんは納得できないまま帰宅しました。

結論としては、娘のBさん名義で保存登記をしないで、父親のAさん名義で保存登記をして、2年か3年経過してから、娘さんに贈与登記をすれば、Aさんの主張どおり建物の評価で贈与になったと思われます。

(平成15年の税法改正で65歳以上の父親から20歳以上の子に贈与したときは2500万円までは贈与時には贈与税を支払わず、贈与することができます)